愛着障害(不安型)について
生きづらさに悩む人の多くは、アダルトチルドレンであるほかにも『愛着障害』を抱えていることが多いようです。
愛着とは、子供時代に親など養育者との間につくられる『愛情に関わる信頼関係』や『絆』といったもの。
幼少期の親(養育者)との関わりの中で、健全な愛着スタイルを育むことができなかった人が、その不健全な愛着スタイルのまま大人になってしまうと、恋人や配偶者との関係がうまくいかずに悩むことになるのです。
ここでは愛着障害の中でも『不安型』とよばれるタイプについて取り上げてみたいと思います。
愛着スタイルとは
私たちはみんな小さな子供の頃に、親など一番身近な養育者との関係を通じて愛着というものを育みます。
赤ちゃんや小さな子供にとって、一番身近な大人である親は絶対的な存在。親が「自分を守ってくれるのかどうか」は無力な子供にとって死活問題ですし、だからこそ子供は親との愛着関係を求めます。
愛着の形成は生後半年から2歳頃までに行われるといわれており、子供が親に対して愛着行動(泣く、ほほえむ、抱きつくなど)をとったときに、親がその子供の愛着行動に対して『どういった反応をしたか』によってその子供の基本的な愛着スタイルがつくられます。
愛着スタイルは大きく分けて3つ(分け方によっては4つ)あり、子供時代に健全な愛着スタイルを築けなかった人がそのまま大人になった場合には、その後の人生で様々な『愛情に関する問題』を抱えることになります。
≪ 愛着スタイルの種類 ≫
A:安定型(健全な愛着スタイル)
B:不安定型(不健全な愛着スタイル)
┗ 不安型
┗ 回避型
┗ (混合型または無秩序型とも)
※愛着スタイルの分類には様々な分け方があります。
愛着形成の流れ
子供の愛着行動に対して親がきちんと受け止めることで、子供は親との絆を感じることができ、自分は守られ愛されているという安心感や自己肯定感を育みます。これが安定型の愛着スタイルです。
一方で、子供が愛着行動をとったにも関わらず、親がそれを無視したり、親の望むようにコントロールしようとしたり、親の都合でその都度反応を変えたりすると、子供はどんなことを学ぶでしょうか?
子供は自分を守ってくれるはずの存在であるの親から「ありのままのあなたには価値がない」という暗黙のメッセージを受け取り、自己肯定感は育ちません。
そして「(自分にとって一番重要な親に受け入れてもらえないのだから)他人にも当然受け入れてもらえるわけがない」という考え方が形成されていきます。
安定型の人が『安心』をベースに他人との愛情関係を築くのだとしたら、不安定型の人は『不安や恐れ』をベースに愛情関係を捉えるのです。
また、愛着は親(養育者)と子供の双方の関係によって育まれるため、世代間連鎖が起こりやすいと言われます。
つまり親が愛着の問題を抱えたまま子育てをすると、健全な子供との接し方ができず、子供も愛着障害になりやすいようです。
もちろん愛着障害を抱えた親の子供すべてが愛着障害になるわけではありませんし、安定型の親であってもままならない事情で子供との愛着関係を築けないこともあります。
泣く、笑いかける、抱きつくなどの愛着行動
うえーん!
ねぇきいてよー!
あらあら、どうしたの?
ママに話してくれる?
愛着行動をきちんと受け止める
ぼくはありのままで愛されてるんだ!
自分の働きかけに親が応えてくれる
▼
「自分は無条件に愛される価値がある」
▼
「周りの人は信用できる!」
泣く、笑いかける、抱きつくなどの愛着行動
うえーん!
ねぇきいてよー!
なによ、男の子が泣いてちゃダメでしょ!
ママ忙しいからあとでね!
愛着行動をきちんと受け止めない
ぼくはありのままじゃ愛されないんだ…
親が自分の働きかけに応えてくれない
▼
「自分は愛される価値がない(無条件に愛されない)」
▼
「周りの人も信用できない」
安定型の愛着スタイル
健全な愛着スタイルを持った人は【安定型】と呼ばれます。
安定型の人は、親との関わりの中で健全な自己肯定感が育まれていますから、「自分は価値のある人間だ」という自信が根底にあります。
また見捨てられ不安がないので、嫉妬や怒りで相手をコントロールする必要もありません。
自分が無条件で愛されると信じており、相手のことも無条件で愛することができます。
自分と相手は別の価値観を持った人間で、どちらも同じように尊重されるべき価値があると考え、適切な距離感で相手と接することができます。
一方で、条件付きの愛を与えてくる人とは距離を置くことができるのも、自分を大切にできているからなのです。
不安型(とらわれ型)の愛着スタイル
幼少期の愛着関係で親が過干渉だったり、ネグレクトだったり、条件付きで認められてきた子供は、【不安型】の愛着スタイルを持つ傾向があります。
自己肯定感が低く『見捨てられ不安』が強いため、相手に嫌われる(見捨てられる)のを恐れるあまり、嫉妬深くなったり、疑り深くなったり、束縛をしがち。
「条件付きでないと愛されない」と学んでしまったために、恋人を信頼できず、相手にも条件つきの愛を求めます。
根底に『慢性的な愛情飢餓』があり、それを埋めるために相手に過剰な愛情を求めます。相手をつなぎとめるために怒りなどの感情で相手をコントロールしようとする傾向も。
いつも不満や怒りを抱えやすく、恋人やパートナーとの間でのトラブルが絶えません。
相手との適切な距離を保つことが難しく、いつの間にか共依存関係に陥りやすいでしょう。
相手に過剰な期待をしては、それを叶えてくれないと勝手に失望するという悪循環の恋愛を繰り返す傾向にあります。
悲劇のヒロインタイプで、「いつも男運がない」と嘆く女性はこの不安型の人が多いかもしれません。
愛着障害を改善する方法
大人の愛着障害を改善する方法は『安全基地をつくること』。
子供の頃に親との間で形成できなかった安心感や自己肯定感をもう一度育てなおすために、親の役割をしてくれる相手を見つけましょう。
安全基地になってもらう相手には、安定型の人を選んでください。情緒不安定な人やあなたの自己肯定感を下げるような相手は向きません。
恋人やパートナーが安定型の人であれば、その人たちがあなたの安全基地になってくれるかもしれませんし、安定型のパートナーや友達がいない場合にはカウンセラーがその役目を果たします。