もともと自尊心が高い人でも、その後の人生で自尊心が失われていくことがあります。
その最たるものが結婚です。
結婚によってもっとも身近になる他人、つまり配偶者が『自尊心を傷つけてくる相手』だった場合です。
代表的なものはモラハラやDVでしょう。
モラハラは精神面での攻撃、DVは肉体的な攻撃ですが、身近な人からの暴力は同時に心も深く傷つくことになります。
ささいなことであっても人としての尊厳を傷つけられるような言動が繰り返されれば、あっというまに蓄積された大きな傷となるでしょう。
男尊女卑的な価値観をもった男性がなにげなく放つひとことが、妻の自尊心を傷つけている可能性は大いにあります。
また、意図的に貶めてくる場合だけでなく、まったく悪気なく傷つけてくる場合も。
その代表的な例として最近目立って増えているのが、配偶者がアスペルガー症候群(以下ASD)の場合です。ASDは発達障害のひとつで、高機能自閉症とも呼ばれる自閉症スペクトラムの一種です。
ASDの特徴は、相手の気持ちになって物事が考えられないことにあります。また、こだわりがとても強いため、自分のやり方以外は認めようとしないことも多いのです。
そのため、ASDの配偶者との結婚生活は、ASDではない側(以下、定型)に一方的な我慢と歩み寄りを強いることになりがちです。
これがただの自分勝手というのなら対処のしようもあるのですが、脳の発達障害が原因なので非常に難しい問題です。
日常会話はできても、深い話や情緒的なやりとりができないASDの配偶者との会話は、まるでロボットを相手にしているようなもので、ASDの人のやり方に合わせている限りはそれほど問題は起きません。
でも一方でそれは『相手の価値観に合わせないと夫婦関係がうまくいかない』ということでもあります。
ASDの人は『歩み寄り』という感覚がわからないため、もう一方が自分の求めるものを押し殺して合わせるしかないという状態となり、それが定型側をカサンドラ症候群にまで追い詰める結果になってしまうのです。
歩み寄ることができない相手とのコミュニケーションが、結果的にカサンドラの自尊心を削っていきます。
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