カサンドラ症候群と自尊心
カサンドラ症候群(情動剥奪症障害)とは
ASD(旧・アスペルガー症候群)の配偶者との情緒的なコミュニケーションができないことにより心身に不調をきたす状態です。
ASDの人は他人に無関心です。興味の幅がとても狭く、それは自分のみに向けられています。それが配偶者であっても家族であっても、『相手の気持ちに関心を持つ』ことができないために、情緒的なコミュニケーションが成り立ちません。
夫と話が
かみあわない…
ASD(アスペルガー症候群)の特徴
周囲に無関心
自分視点からしか物事を見られない
相手の感情や空気を読めない
共感能力が低い
定型発達者の特徴(※人により程度の差あり)
周囲にも関心がある
他人視点で物事を考えられる
相手の感情や空気をある程度察せる
共感能力がある
他人への関心とコミュニケーション
誰かに『共感する』、誰かの『感情を察する』ということはふつう、相手に対して興味がないとできないこと。私たちは相手に興味があるからこそ、『相手の立場に立って物事を見よう』とし、その結果、相手と感情を共有しています。
しかし、ASDの人はそもそも【周囲に無関心】で、さらに【興味のあることにしか目がいかない】という特性があります。興味がない相手の立場に立って物事を考えられないのですから、相手の感情や空気を読めないのは当然です。
「ASDの配偶者と会話が成り立たない」という悩みが多いのも、定型発達者同士の会話がキャッチボールなのに対し、ASDの人の会話はドッジボールであるからでしょう。
「相手が取れる球を投げよう」とするのではなく、「自分が言いたいことを言うこと」にしか意識がいかないので、相手が受け取れるかどうかは自分には関係のないこと、それによってケガをしても相手の問題だと考えがちです。だから投げる球は手加減しませんし、相手から投げられた球を受け取ろうとする努力も(興味がないので)しないのです。
自分事にしか興味がないASDの人に、「もっと配偶者の気持ちに興味を持て」と強要することはできません。このどうにもならないジレンマこそが、ASDの人と家族になった人間の、苦しみの根底にあるのでしょう。
■定型発達者のコミュニケーション
会話はキャッチボール
取りやすい
ように投げる
うけとる
うけとる
取りやすい
ように投げる
■定型発達者とASDのコミュニケーション
会話はドッジボール
投げる
よける
直球を投げる
自尊心を傷つける『好きの反対は無関心』の概念
好きの反対は、無関心です。
私たちは普通、自分にとって大切な人には関心を持ち、どうでもいい人には無関心ですよね。嫌いな人に対しては『存在は認めてるけど嫌い』なのに対し、無関心な人に対してはそもそも『存在すらないもの』として生きています。
人間は良くも悪くも存在を認められることで自分の存在価値を保っていますが、とりわけ好意を持っている相手に関心を持たれることで存在を肯定されていると感じるもの。
好きな人が自分に無関心だったらとても悲しいですよね。
ASDの人は、自分事にしか興味が持てないゆえに、結果的にこの『あなたには無関心です』という相手の存在価値を否定するようなメッセージを、悪気なく相手に突きつけてしまうのです。
これを繰り返された相手は次第に自尊心をすり減らし、カサンドラ症候群と呼ばれる状態に陥ります。
このようにASD側に悪意はなく、『傷つけてくるような行動は、発達障害の特性によるもの』という事実が、傷つけられた心の矛先を失わせ、カサンドラはますます追い詰められてしまいます。
定型発達者の思考回路
好き ⇔ 無関心
ASDの思考回路
好き だけど 無関心
自分への無関心が発達障害によるものだとわかっても、
感情的に傷つかないことは難しい。